ボクが人格なのかしきたりなのか迷信なのか構造なのか骨格なのか他の何かなのか、どれもしっくりこなくなってきて、そういう疑いを抱いているパフォーマンスをしているだけだと信じ込ませようとしている人格が存在するんだと言い聞かせて実際そうなのだと納得させようとしているところに、定時のチャイムが流れた。
ボクC「お先に失礼します」
仮面「今日はどこに行くんですか」
ボク「行ってみたいバーがあるんです。場所はまだどこなのか調べてないんですけどね」
仮面「私が調べてお連れいたしましょうか」
ボク「わからないのをなんとなく勘を頼りになんとか見つけるボクの楽しみを奪うのはやめてもらっていいですか」

砂時計には入口が二種類ある。そのうちの一つがバーだ。ボクが社会とつながりのある場所のうちの一つでもある。ボクはそこに行ってそこから帰らず、そこからさらに砂時計に行く。ボクにとってのバーとはいつも一方通行で、出口がない場所だ。普通の酒好きには邪道と言われるであろうくらいに甘ったるくしてもらったフローズンダイキリとまっとうなギムレットとマスターのおすすめのカクテルを飲んで、小さめのピザに少しはちみつをかけて口に含む。クレジットカードで会計を済ませてから砂時計に入る。

砂時計に入ると一定時間のうちにコードを入力しないと、セキュリティ解除の警告音がけたたましく鳴り響く。わざと時間をかけて警告がなるまで待って、管理者の仕事を増やす。管理者から電話がなる。ボクが社会とつながりを持つ最後の瞬間だ。コードを入力し終えると、ボクは砂時計に。