ボクは電話をするのが怖かった。
どんな調子で話し始めればよいのか想像がつかなかった。
ボクの名前を忘れてしまっているかもしれないし、知らないかもしれない。

昨夜までは、こう言おうと思い浮かんでいたことがもう今になってはどこにもヒントさえなく、少々途方に暮れていた。
光とか影とか、時間の進み具合とか止まり具合とか、ある点からの逆方向の絶対値で自分の立ち位置を確認して、精神のバランスを保っているボクには、今から話さなければいけない関係とつながっていない空間とを始めることで終わってしまうことが、終わることが中断ではなく終わってしまうことになることが他ごとに逃避させる。