こちらは今日はかなりいい天気でした。カラッとして
そちらはどうでしょうか。

「なんとかして正十二面体をサッカーボールにしたくて、角をキコキコ削っていました」



こちらも今日はかなりいい天気でした。カラッとして


「いや、無理でしょ。正二十面体で始めなきゃ」





浜辺でしゃがみ込んで、波に掻き消される跡をなぞっているような、何も無くなってしまったからっぽの清みを、余韻だけでも残しておきたいと、受話器の向こうの声。
話し相手が欲しかっただけなの。
TU-TU-

KACHA!

もしもし、僕です。




前略

大きなカンバスを地面に倒して、靴を脱いで馬乗りになりながら筆を振るうのがお好きでしたね。昔から、ぼくには全く絵心がなくて、会うたびに出来かけの画面が時に大きく変化していくにしても、ぼくには構図も何も訳が分からなくて、ただ、一度だけ大変にご機嫌のいい日に伺った時に、油絵の具がとても晴れ晴れしいのを感じたことがあるだけです。その一度だけ。
いつ完成しそうですか、とお聞きした時に、ライフワークだから、とお答えになりましたね。あの時のお顔はとても印象的で今も思い出すことができます。

前置きが長すぎますね、スイマセン。ライフワークだったはずのカンバスからも降りて、最近は筆に触れてもいらっしゃらないと聞いて、少し驚いています。他人が口を挟むようなものでもないのかもしれませんが、ぼくとしても訪れないにせよ、いつかやって来るかもしれない「完成」を楽しみにしていた一人としては、少しお話を伺いたいと思っています。
貧乏暇なしとはよくいったもので忙しくしており直ぐにお伺いすることができませんが、近いうちに必ず時間を作ります。それまでに、お手紙でお返事などいただけないかしら、なんて調子が良すぎますね。スイマセン。でもお返事いただけたら本当に嬉しいです。

それでは、長文失礼いたしました。

一ファンより