無知で調教された象の泣き声は、お守りの鈴の音よりも小さい。

彼女が祖父母よりも寿命が短いと聞かされて、家路ですれ違うすべての人がボクより幸福に見えた日。ボクは確かに何かを失っていた。

病気の彼女を捨てたボクは、普通に仕事をし、ラウンジで酒を呑み、その場でしか接点のない女にけだるい話をし、迫りくる性欲に飲み込まれ沈殿した。

ロックでオーダーしたウイスキーが生暖かい水割りに成り果てたとき、ボクは確かにまたひとつ失っていた。

この不幸を感じるために生まれてきたのであれば、誰に何の特があったのだろう。きっと誰かがほくそ笑んでいる。君の人生は君が引き受けるんだ。

ボクと彼女の間に生まれるはずだった子供たちは、巡回サーカスのピエロが連れて行ってしまった。子供たちは、母親を道連れにした。
なぜ、ボクは残されたのか。

彼女に必要とされなくなったボクは、急激に蝕まれていく。

女は笑っているが、不信の笑みであれば瞳は見えない。視線をそらすのであれば、ボクが目を合わせる前にそうするべきだったんだ。落ちるのであれば上が在ることを忘れてはいけない。それを忘れてしまえば、この世から空中ブランコは存在できなくなるし、恋もできなくなる。

呪文のように問い合わせ続けるんだ。なぜって、

404エラーが発生するまであきらめちゃいけない。君はボクとは違うのだから。